ニワゼキショウ - 気品ある北米からの来訪者
ニワゼキショウ(庭石菖)は、はアヤメ科ニワゼキショウ属の多年草だが、暑い夏を越せず、一年草として扱われる場合もある。ニワゼキショウの名は、葉がセキショウ(石菖、サトイモ科)の葉に似ているので命名されたが、イメージは全く異なる。英名のAnnual Blue Eyed Grassの方が実態を現しているように思う。 原産地は北米で、明治初期に渡来し、当初は珍しい植物として東京大学付属植物園など栽培されていたが、繁殖力が強いため野生化し、現在では東北地方南部から沖縄までの日当たりの良い草地や芝生などに雑草として自生している。5月になると6弁の小さな花が地表を覆うように群生し、一際目立つ。花の色は紫と白だが別種ではなく、どうやらメンデルの法則に則って出現するらしい。名前の由来、日本での普及の事情、花の色など、何やらミステリアスな雰囲気のあるニワゼキショウを調べてみよう。

【基本情報】
・名称:ニワゼキショウ(庭石菖)
・別名: Annual Blue Eyed Grass(英名)
・学名:Sisyrinchium rosulatum
・分類:アヤメ科ニワゼキショウ属の一年草または多年草
・原産地:米国東部
・分布:明治中期に渡来し、日本各地に広く分布
・花言葉:繁栄、豊かな感情、豊富、愛らしい人
■生態
茎は基部で枝分かれして直立する。葉は長く先が尖り、二つ折りになり茎を抱き、茎に沿って直立する。茎の先に細い花柄をだし、1日でしぼむ小さな花を次々に咲かせるので花期は長い。花の後に丸い果実ができ、そこから種がこぼれて増えていく。
ニワゼキショウの花の色は白と紫の2通りがあるが、花色の相違で異なる品種としての名前はつけられていない。実はこの2つの花色は品種として固定されたものではなく、メンデルの法則に則って出現することが分かった。つまり、紫花と白花を交配すると、白花が優生種なので子の世代はすべて白花となり、子同士を交配させた孫の世代は紫花:白花がおおむね1:3の比率で出現するらしい。紫花と白花は色は異なっても構造は同じだ。



■花
ニワゼキショウの花弁は6枚だが、良く見ると内花被片3個と外花被片3個が交互に配置され、上に重なる内花被片の幅がやや狭い。これらの花被片は中央部で合着し、その部分は黄色で、その中に雌蕊が1本、雄蕊が3本ある。白い花の花弁の裏側には紫色の筋が目立ち、表面では目立たない。紫色の花では花弁の表裏で紫色の筋がある。





■果実
果実は球形の蒴果で、紫色を帯びた黄褐色。熟すと下向きになり、3裂して黒褐色の種子を散らす。

■近縁種 オオニワゼキショウ
オオニワゼキショウ(大庭石菖、学名:Sisyrinchium micranthum Cav.)は、ニワゼキショウと同属の外来種で、中米、南米原産(北米原産説もあり)の1年草又は多年草。オオニワゼキショウは、ニワゼキショウよりも全体にやや大きいが、花は逆に小さい。ニワゼキショウの白花とよく似ているが、花の色は淡青紫色で、花弁は内花被片と外花被片の重なりが大きいので花弁の切込みがより小さく見える。また、花弁の裏の筋の色が薄いので区別できる。


■近縁種 ルリニワゼキショウ
ルリニワゼキショウ(瑠璃庭石菖、別名:藍色庭石菖、学名:Sisyrinchium angustifolium)は、ニワゼキショウと同属の外来種で、北米東部原産の1年草又は多年草。ニワゼキショウやオオニワゼキショウとは花色が異なり、青紫色。花弁の形は先端がやや凹み、その先が尖る。また、雄蕊が基部中央で一本に合着し、その先端から雌蕊の花柱が飛び出るのも特徴。


■ニワゼキショウと日本人
原産地の北米では、ニワゼキショウの仲間は100種類にも及ぶという。日本には明治時代に雑草として紛れ込み、一時期栽培された時期もあったが、繁殖力が強く、結局野生化し雑草として生きている。ニワゼキショウには薬効も毒性もなく、飼料にもならならず、人の役には立たないので、人から関心を持たれることはない。しかし、ニワゼキショウはアヤメ科の植物だが、日本のものとは随分と大きさも構造も異なるが、それなりに美しく気品のある花ではある。また、種類も多く多様性に富み、群生するので見応えもある。観賞用の植物としては、手入れ不要で、自然の趣のある色とりどりの小さな花が咲き乱れる様はなかなか良いものだ。今のところ、新天地日本では、風土に溶け込んだ生活をているようだが、この先どうなるのか気がかりではある。