ウワミズザクラ - 神聖な桜
ウワミズザクラ(上溝桜)は、バラ科ウワミズザクラ属の落葉高木。樹高は20mにもなる。日本の在来種であり、北海道西南部と本州、四国、九州の低地や山地に自生。名前の由来は、諸説あるが、古代の占いで亀の甲羅や鹿の肩甲骨の裏に溝を彫り、葉がサクラに似ている本種の樹皮を燃やして焼いたときに、彫った溝にできる割れ目の模様で吉凶を占ったことから、"上溝桜"となり、これが転訛して"ウワミズザクラ"となったらしい。果たして転訛させる必要はあったのかしら、名と実態が乖離しややこしい。ウワミズザクラの特徴は、桜とは異なり、白いブラシのような花と、初夏から初秋にかけて熟すにしたがって黄色から橙色、赤色、黒色が変化していく果実が印象的。人との関わりも多くて宗教行事、建材や工芸細工用、伝統的な食用などに利用されてきた。サクラとは一線を画すウワミズザクラはどのような樹木だろうか。

【基本情報】
・名称:ウワミズザクラ(上溝桜)
・別名:ハハカ(波波迦)、コンゴウザクラ(金剛桜)、アンニンゴ(杏仁香)、ウワミゾ、灰葉稠李(中国名)
・学名:Padus grayana
・分類:バラ科 ウワミズザクラ属の落葉高木
・原産地:日本、中国
・分布:日本では北海道西南部と本州、四国、九州の低地や山地に自生
・花言葉:持続する愛情、心の美 、純潔
■形態
枝の形成方法に特徴がある。2年を過ぎた黒紫色の枝に、赤褐色の1年枝が多数つく。花は1年枝の先につき、花を持った1年枝のほとんどが秋には落ち、花の無い1年枝のいくつかが残って2年枝になり、新しい樹形を形成する。葉は互生し、卵形の長楕円形、縁には鋸歯がある。花序をつける枝には、数枚の葉がつく。


■花
ソメイヨシノの花が散った頃に、ウワミズザクラは開花する。花は白色で、短い花柄で茎につき、円柱状につながる総状花序を形成。花弁が5個、中央に雌蕊が1個、その周りに雄蕊が約30個あり、花弁よりも長く飛び出している。遠くから見ると、まるで白いブラシのよう。





■果実
花の後に、子房の幾つかが果実になる。形は先が尖り、色は、始めは緑色、次に黄色で、熟すと赤色から黒色になる。果実が緑黄色の時には塩漬けに(新潟県越後川口の特産"あんにんごの塩漬け")、赤くなったら焼酎漬けに利用されている。





■ウワミズザクラと日本人
個人的にウワミズザクラを意識したのは、狭山湖の周回道路脇の陽当りの良い高台に背の高い樹木があり、それが満開のブラシのような花で樹木全体が白っぽくなっていて、これは何の木だろうと思ったときだ。その後、葉の間から見え隠れする色変わりする房状の果実に気がつき強く印象に残った。ウワミズザクラは見かける機会もそれ程多くもなく、人間にとって実用的な意味も少ない。それでも古代人が占いの道具に選んだのは、堂々とした樹形に広がる異形の白い花、神秘的な果実の色と形に、神の存在を感じたためかもしれない。現代人にとっても、この美しさは充分に理解できる。