オトコヨウゾメ - 足るを知る
オトコヨウゾメ(男莢迷)は、ガマズミ科ガマズミ属の落葉低木。日本の固有種で北海道と北陸地方を除き、山野の日当たりのよい場所に自生する。誰もが不思議に思う名称オトコヨウゾメの由来は、ガマズミ類をヨウゾメと呼ぶ地方があり、果実が赤く熟すと食用にしたが、本種の果実は苦くて食べれないので、食用にならないものの接頭語"男"(何故男?)を冠してオトコヨウゾメとなったとの説がある。ややこしい名前は兎も角、淡いピンクを帯びた花がまばらに咲き、扁平の実がやがて赤い楕円体にゆっくりと変化する。花も果実も小さく且つ分散的なので、あまり目立たない。ボリューム感のある同属のガマズミとは、ずいぶん雰囲気が異なる。この清楚で上品な樹木はどのようなものなのだろうか。

【基本情報】
・名称:オトコヨウゾメ(男莢迷)
・別名:コネソ
・学名:Viburnum phlebotrichum
・分類:ガマズミ科 ガマズミ属の落葉低木
・原産地:日本の固有種
・分布:北陸地方を除く本州、四国、九州
・花言葉:委ねられた想い
■形態
樹高は2m程度の落葉低木。幹は真っ直ぐに伸び、枝は密に分かれる。冬芽は枝先と、枝の途中で対生につき、芽を覆って保護する芽鱗はつやのある卵形の暗紅色。若い枝は赤褐色で、のちに灰色または灰褐色になる。



■葉
葉は対生し、葉脈は網状脈で、形は卵円形。葉の先端は尖り、葉縁には粗い鋸歯があり、鋸歯の先は尖る。葉の主脈から分かれた側脈は平行して葉の縁までまっすぐに伸び、表面はへこみ裏面に突き出て凸凹状になる。



■花
開花は4月。枝先から1対の葉と共に、小花を3~20個まばらにつけた散房花序を出す。花序は横向きか垂れ下がるようにつき、花序を上向きに付けるガマズミとは異なる。小花に注目すると、花柄は細く長い。萼は小さく5裂して、小さな3角形の集合となり、帯赤色。白い花弁の先は5分裂する。雄蕊は5個あり、その先の葯は小さな広楕円形。雌蕊の柱頭は3裂し、やや赤みがかっている。







■果実
花が咲き終わると緑色で扁平の果実がつき始める。果実は成長するにつれ、色は赤くなり、形は楕円体になる。核果で、中に種子が1個入っている。秋になると葉の隙間から赤い艶のある果実が見え隠れする。




■オトコヨウゾメと日本人
オトコヨウゾメは在来種ではあるが、人間との関係は薬用や食用などの実用的なものではなく、庭木にしたり果実酒にしたり、せいぜい趣味の世界でつながっている。春に咲く白く清楚な花、秋に葉の間から見え隠れする艶のある赤い実は日本人の美意識に良く合っていると思う。しかし、この美意識は、春の桜や秋の紅葉のように、人々に熱狂を感じさせるものではない。オトコヨウゾメを見た感動を、他の人に伝える人は少ないと思う。それは感動の種類が異なり、皆が感動するしきい値と、特定の価値観を持つ数寄者のしきい値が異なるためだ。オトコヨウゾメは"足るを知る"を実践しており、何ら不足なく、満ち足りていることを理解していると思う。多分、天才バカボンのようにコレデイイノダと思っているノダ。だから日本人はオトコヨウゾメを愛でるのだ。