カリン - 美しくもあり有用でもあり
カリン(花梨)は、バラ科カリン属の落葉高木。原産は中国東部で、日本へ渡来は、1000年前とも江戸時代とも言われ不明。自生はせず、植栽として栽培される。カリンと言えば、春のピンクの可憐な花と、秋の大きなナシのような果実、そして樹皮が剥がれた独特の幹肌が特徴で、庭木として十分に楽しめる。そればかりでなく、果実酒や砂糖漬けにされたり、のど飴にも利用されて、実用的な観点からも馴染み深い。

【基本情報】
・名称:カリン(花梨、花櫚、榠樝)
・別名:カラナシ、カリントウ、アンランジュ(安蘭樹)、アンラジュ(菴羅樹)…
・学名:Pseudocydonia sinensis
・分類:バラ科カリン属の落葉高木
・原産地:中国東部
・分布:日本では東北地方以南の本州、四国、九州で植栽
・花言葉:努力、唯一の恋
■新芽の頃
冬芽は枝に互生し円錐形で、茶色のウロコのような葉である芽鱗で包まれる。同時にその下には葉の若い芽も生えてくる。開花が近づくと芽鱗が垂れ、若葉が成長する。



■木肌や樹形
成熟した木の幹の表面は滑らかで、緑色と茶褐色の表面が不規則にウロコ状に入り乱れてモザイク状となり、独特の雰囲気がある。また、幹から伸びる枝は上に真っ直ぐ伸びるため、遠くからカリンを眺めると、樹形は円柱状に見える。


■花
花は5弁で、ピンクの花を枝先に咲かせる。どの花も同じではなく、良く見ると2種類の花が混在する。一つの花に雌蕊と雄蕊が存在する両性花と、雌蕊がない雄花である。。両性花は20本の雄蕊の中央に雌蕊の花柱が5個あり、長い萼筒に包まれた子房が果実へと成長していく。雄花は花柱がなく雄蕊20本で構成され、萼筒が短い。また、ハナアブなどが花を訪れ、受粉をサポートする。








■果実
花後に子房が成長し、果実は最終的には大きなナシのような楕円体になる。紅葉の時期に黄色に熟す。未熟な実は表面に褐色の綿状の毛が密生するが、熟した果実は毛は消え表面が少し凸凹しているが、落葉後も枝に残るもの多い。また、熟した果実は芳香性があり、部屋に置くと香りを楽しむこともでき、中国では"香木瓜"とも呼ばれる。果肉は固く、渋くて石細胞が多いため、生食はできない。このため、砂糖漬けや果実酒などにして果樹として利用される。




■カリンと日本人
大きくて硬い果実は生食には向いていないが、果肉を切って焼酎漬けのリキュールにしたり、砂糖や蜂蜜に漬けたり、ジャムやゼリーに加工して食用にしてきた。また未成熟の青い果実を輪切りにして陰干しした生薬は、痰や咳止め、整腸、利尿、鎮痛に効果があるとされる。カリンの入ったのど飴を利用している人も多いだろう。また、木材の質は比較的かたくて緻密、丈夫であることから、額縁、彫刻材、洋傘の柄、バイオリンの弓などにも使われ、樹皮のがまだら模様を活用して床柱などの建築材となる。
庭木として考えると、こんなに利用価値のある樹木はない。所沢周辺にもカリンの木は公園や畑の脇で栽培されていて、秋になると果実が枝にたわわに稔っている。試しに焼酎漬けのリキュール作ってみたが、かなり酸味と渋みが勝る。しかし、カリンの良さは利用価値の多さではなく、春に若葉とともに咲く花、秋に黄葉とともに現れる成熟した果実が、桜や紅葉のように分かり易いモノトーンな方法でなく、地味だけど調和した彩りで季節の変わり目を教えてくれるのが嬉しい。
カリンののど飴を入手。カリンのエキスが少し入っているらしい。カリン酒で味わったのとは異なり、甘く美味しい。大手菓子メーカーロッテのもので製造工場は所沢市の隣の狭山市。国産カリンエキス使用を表示。残念ながら産地は不明。
