ウグイスカグラ - 清楚な季節の道標
ウグイスカグラ(鶯神楽)は、スイカズラ科の落葉低木。スイカズラの仲間だが、名前はウグイスカグラで間違え易い。鶯が鳴きはじめる頃に開花するとか、鶯がこの木にの葉の間に隠れる(ウグイスガクレ)から、とか諸説あり。日本固有種で、北海道南西部から本州、四国、九州に分布。日当たりの良い山野に自生するが、観賞用として庭にも植えられる。春には漏斗形のピンクで清楚な小さな花が枝に沿って咲き、初夏には果実が緑から赤に変化する。花も果実も小さく地味で目立たないが、日本人の美意識にかない春から夏への季節の移り変わりを感じさせる身近な植物だ。

【基本情報】
・名称:ウグイスカグラ(鶯神楽)
・別名:ウグイスノキ(鶯の木)、ゴリョウゲ(御霊木)
・学名:Lonicera gracilipes
・分類:スイカズラ科スイカズラ属の落葉低木
・原産地:日本
・分布:北海道南西部から本州、四国、九州
・花言葉:未来を見つめる、明日への希望
■冬芽
冬芽には2通りの形態があるようだ。新しい細い枝には周期的に対生の新芽がついている。一方、古く太い幹には葉柄基部がつば状に広がったものが残り、その上に対生の新芽がつく。これらは別の植物かと思ったが、確かに同じ木から伸びている。形態の異なる双方の枝から冬芽をつけ、成長を確実にするためのものだろうか。


■花と葉
早春に葉が芽吹くと、蕾が膨らみ、枝の葉の付け根から1~2cmの花柄が伸び、ピンクの花が1~2個つく。花冠は長さ10~15mmの細い漏斗状で、先は5裂して開き、雄蕊は長く花冠の外にはみ出す。花の色は基本はピンクだが、個体によって結構濃淡がある。葉は対生で先の尖った楕円形で、新芽から若い葉にかけての時期は葉の縁が赤くなることが多い。





■果実
蕾から花、果実に至るまでの期間は花によってまちまちで、蕾、花、若い果実が混在する時期がある。花が咲き終わると、緑の未熟の果実ができ、初夏には赤く成熟する。果実は液果で、長さ約1 cm程度の楕円形で透明感がある。細い果柄の先に1個、ときに2個つき、つけ根に1~2個の苞が残る。熟した果実は甘く食用になる。果実の中に種子があり、丸みのある茶色の平たい楕円形をしている。






■近縁種のシロバナウグイスカグラ (白花鶯神楽)
シロバナウグイスカグラはウグイスカグラとは近縁の別品種で、花の色は白い。葉や鼻の表面に毛はなく、ウグイスカグラと同様。遭遇する機会は、ウグイスカグラよりかなり少ない。


■近縁種のミヤマウグイスカグラ(深山鶯神楽)
ウグイスカグラとの違いは、目を近づけて観察すると、花弁や葉の付け根部分、それに果実の表面全体に細かな毛が結構多数あること。なかなか野性的な風貌だ。しかし、遠目で見ると見逃してしまいそう。当地では、シロバナウグイスカグラよりも見かける機会は多いが、それでもウグイスカグラよりはかなり希少な存在だ。




■「ウグイスカグラ」に関する日本人の思い
ウグイスカグラは、日本の固有種であることもあり、昔から多くの人々により説明や解釈がされてきた。
平安時代に作られた辞書「和名類聚抄」では、飛鳥・奈良時代にウグイスノキという木が存在していたということ、そして、その実は果物の一つとして食べられていたとのこと。
江戸時代になると貝原益軒の「大和本草」に、ウグイスノキは鶯が鳴き始める時期に咲くので名づけられたものであろうと記述され、その後江戸時代後期からウグイスカグラと呼ばれるようになったらしい。
また、現代の植物研究家深津正氏によると、ウグイスカグラは『ウグイスかくら(狩座)』の転じたもので、この『かくら』は、狩をする場所、つまり『狩り座』(かりくら)を意味し、ウグイスを捕らえるには、この木はもってこいの場所になる。その結果、この木を猟場を意味する『かくら』の語を添えてウグイスカクラと称した。また、この猟場説を採ると、ウグイスカグラの別名であるゴリョウゲも『御猟木』と解釈される…と説明した。
古来から日本人が「ウグイスカグラ」に付いて考察してきた内容は、現代人にとっても既視感があり、何となく納得のできるものだ。これだけ刷り込んでおけば、今後ウグイスカグラをウグイスカズラと言い間違えないようにできそうだ。