サンシュユ - 楽しみは早春と秋
サンシュユ(山茱萸)はミズキ科ミズキ属の中国原産の落葉小高木。春先に葉が出る前に黄色い花を咲かせるのでハルコガネバナ、秋にはグミに似た赤い実をつけるのでヤマグミ、アキサンゴとも呼ばれる。日本には約300年前の江戸時代享保年間に朝鮮経由で種子が日本に持ち込まれた。早春に鈴なりの黄色い花が咲くので観賞用に庭木や公園樹として栽培され、また秋の艷やかな赤い果実は見ても良く、生薬にも利用されている。毎年2回、黄と赤で季節の変わり目を告げてくれる樹木だ。北海道を除く各地の人の生活圏で栽培されているので、日本人にはすっかりお馴染みの存在になっている。
【基本情報】
・名称:サンシュユ(山茱萸)
・別名:ハルコガネバナ(春黄金花)、アキサンゴ(秋珊瑚)、ヤマグミ(山茱萸)
・学名:Cornus officinalis
・分類:ミズキ科 ミズキ属 落葉小高木
・原産国:中国(享保年間の1720年頃に渡来)
・分布:日本国内では東北から九州地方
・花言葉:持続、耐久、強い愛
・季語:春

■蕾
サンシュユの枝は箒を逆さにしたように広がり、斜めに立ち上がる。枝分かれした先に蕾ができる。茶色の4枚の苞葉に包まれ複数の黄色い楕円体が集まっているが、この一つ一つが蕾なので、サンシュユは集合花だ。蕾の先は始めは尖った形をしているが、やがて丸みを帯び花が咲く。


■花
サンシュユの花は集合花であり、4枚の苞葉に包まれている。その内側には、ほぼ同じ長さの花柄をもつ多数の鮮やかな黄色い花が放射状に咲く。この散形花序は成長するにつれ花柄は長くなり、集合花の輪郭は球形から横方向に広がっていく。 若葉に先立って開花するので、開花の季節は木全体が黄色に染まる。樹高は10mを越えるので、遠くからも良く目立つ。 花の構造は、花径は4~5mm、花弁は4枚で反り返り、中央に雌蕊が1本、それを取り囲むように雄蕊は4本。全て黄色で鮮やかだ。






■果実
花が終わると、長く伸びた花柄の先に子房が膨らみ始める。晩春には子房は未だ緑色だが、楕円体の果実の形になり、その先に雌蕊の痕跡が残る。この頃には葉が木を覆う。葉は有柄で互生し、卵形から長楕円形で側脈は5~7対あり、葉先が尖っている。紅葉はするが色は渋く、形も崩れりたりするので殆んど目立たない。



秋になると果実は色づき始める。果実は長さが2cm程度の楕円体で核果。これは種子を包む内果皮が硬化して核となり、その核を囲む中果皮が多肉質となり、野鳥に運んでもらうには好都合。ヒヨドリやオナガが好むようだ。

果実は晩秋には赤く熟し、グミのそれに似ているのでヤマグミ(山茱萸)とも呼ばれる。また、鮮やかな赤い実であるためアキサンゴ(秋珊瑚)の名もある。果実は甘いが酸味と渋みがあり生食はしないが、薬用として利用されている。また冬には赤い実が残ると同時に、来るべき春に備え花の芽も成長をしている。



■サンシュユと日本人
サンシュユは、日本では先ず生薬としても利用された。赤熟した果実から種子を除き、乾燥させた果肉を山茱萸の名で日本薬局方に収録されている。効能は、強精、止血、滋養強壮、頻尿、収斂、冷え性、低血圧症、不眠症等々。漢方薬の牛車腎気丸、八味地黄丸、杞菊地黄丸等に利用されている。
人里で早春に黄色い花を咲かせる樹木は、サンシュユの他にもロウバイやマンサク等多々ある。この中でサンシュユは樹形が逆箒形で立派で風格があり、一面に黄色い花が咲く様は春に咲くピンクのソメイヨシノの前触れのようで既視感もある。秋の深い赤の艶のある実も美しく、四季折々の楽しみもある。そして花柄が伸びるに連れて、その先の花が果実に変化していく成長過程もストレートに分かりやすい。渡来種ではあることを忘れてしまいそうなくらい真っ直ぐだ。