オウバイ - リアルな迎春花
オウバイ(黄梅)は早春に他の花に先駆けて黄色い花をつける中国原産のモクセイ科ソケイ属(ジャスミン属)の落葉低木の庭木。中国では迎春花、英語圏ではWinter Jasmineと呼ばれていて、冬から春への移ろいを象徴する花だ。日本では同じ時期に開花するバラ科のウメの仲間ではないが、花の大きさや正面から見たイメージが似ているので黄梅と呼ばれるようになった。これが吉と出るか凶と出るかは微妙で、少なからず誤解を与えているように思う。
ウメの花弁は5枚の離弁花だが、オウバイの花弁は6枚で根元でつながる合弁花。オウバイの花の雌蕊は1本で細いが露出しているので目立つが、雄蕊は2本で合弁花の根元付近にあるので外からは殆ど見えない。また、雄蕊が細い合弁花の根本にあるため、花粉を媒介する昆虫は入ってこれないので、実はならない。このため、オウバイは挿木で繁殖する。枝は垂れ下がる半つる性で、地面についた枝からは根が発生して新たな株ができる。また、ジャスミン属の植物でありながら芳香はない。どうやらオウバイはかなりユニークな植物のようだ。

【基本情報】
・名称:オウバイ(黄梅)
・別名:迎春花(中国語名)、Winter Jasmine(英名)
・学名:Jasminum nudiflorum Lindl.
・分類:キク類 モクセイ科 ソケイ属(ジャスミン属)の落葉低木
・花期:1月から咲き始め4月まで
・原産国:中国
・用途:庭木、薬用
・季語:立春(2月4日頃)から啓蟄の前日(3月5日頃)まで
・花言葉:期待、恩恵、控えめな美
■オウバイの花
枝先に複数の蕾を持ち、順番に咲いていく。咲き始めは花弁の輪郭は、蕾の色と同様に茶色。開花後、花の色は鮮やかな黄色から、退色したように次第に白っぽくなる。花を横から見ると合弁花の筒状の部分が長く、雄蕊が奥まったところにあるのが透けて見える。






■オウバイと日本人
オウバイは江戸時代の寛永年間(1624~44年)に中国より渡来し、庭木や観賞用に栽培され品種改良も行われてきた。日本人とは既に400年位のお付き合いだ。しかしどうしても名前が気になる。同じ季節に白梅や紅梅が咲き、一見似た様な形をした綺麗な黄色い花がやってきたから黄梅にしてしまったのだろう。生態も形も異なるのにそうしてしまったのは、園芸種ゆえのビジネス上の方便かもしれない。早春の期待を表すならば、原産国名の迎春花の方が納得できる。それでも日本人は、花の人格権を忖度しつつ、春になればウメもオウバイも見に行くのだ。
また、オウバイは花は飲むことによって解熱や利尿に用いられる生薬でもある。葉についても飲んだり塗布すると、できもの、はれもの、打ち傷や切り傷等に効果があると言われている。
■近縁種ウンナンオウバイ(雲南黄梅)
オウバイに良く似た植物にウンナンオウバイ(別名オウバイモドキ)がある。同じモクセイ科ソケイ属のつる性低木だが常緑樹。花期は少し遅く3~4月、花弁はやや大きくて6~10枚あるので、二重または八重咲き。明治時代に中国より渡来。全体的にオウバイはシンプルで清楚だが、ウンナンオウバイは豪華な感じなので区別はできる。




