アオキ - 冬の待ち人
アオキ(青木)は日本原産の常緑低木。北海道を除く日本各地や、朝鮮半島に分布。植物分類上はやや混乱。APG植物分類体系ではアオキ属であるが、上位分類ではアオキ科ともガリア科とも呼ばれる。四季を通じて葉も枝も緑で、冬に赤くなる実とのコントラストが美しい。野山に広く自生し、園芸用としても育てられる。海外にも輸出され、学名のAucubaは青木葉、japonicaは日本の…と言う意味、英名のJapanese laurelは月桂樹の葉の形と色から名付けられたらしい。ここまでは、見目麗しく格調高いアオキのイメージを与えるが、一方で繁殖力は旺盛。人の身長より高くなり、その下に生える植物の成長を妨げるので環境保全の観点からは駆除の対象にもなりうる。程々に分散して生育してくれると良いのだが。散歩道では四季を通して必ず出会う植物であり、日本人には馴染み深い植物だ。
【基本情報】
・名称:アオキ(青木)
・学名:Aucuba japonica Thunb. var. japonica
・英名:Japanese Aucuba
・分類:アオキ科orガリア科 アオキ属
・原産地:日本
・分布:北海道を除く日本各地、朝鮮半島
・生態:雌雄異株
・花言葉:初志貫徹

■アオキの花
晩冬に冬芽が膨らみ、早春になると花序が伸び、多数の蕾と若い葉が現れる。雄株の花は褐色を帯びた紫色で4弁で、雄蕊も4本。花の中央に雌蕊が退化した痕がある。




良く観察すると、何故か花弁と雄蕊が5本のものもあった。

雌株の花も雄花と同様の色で花弁も4。中央に緑色の花柱が突き出しているて、雄蕊は消失。また不思議なことに3弁の雌花を発見(下図中央部分)。アオキの花弁数は多少曖昧さがあるような。

■アオキの実
実の形は楕円体で、始めは緑色だが、正月頃から斑に色付き始めて、春には全体が鮮やかな赤になる。成熟した実は渡り鳥のヒヨドリや、小さなネズミたちの餌になる。この様な被食散布により、次世代に命を繋ぐ。春に新たな花が咲くまで実が枝に残ることもある。




春になって変形したり、赤と緑のツートンカラーになっている実が残っていることがある。所謂"虫こぶ”のように大幅な形状変化をしている訳では無いが、なにか生育を阻害するものに遭遇したようだ。これはアオキミタマバエがアオキの実に産卵して寄生し、幼虫、蛹の時期を過ごすためのようだ。

■人間との関係
日本古来の植物なので、様々な薬効が研究されている。葉には、苦味によって胃の機能を活性化する作用があり、民間薬の陀羅尼助の原料の一つとして配合されている。また、生葉には膿を出させる排膿作用、消炎作用、抗菌作用があり、果実には配糖体のオークビンが含まれていて生理活性物質の機能調節や、物質の貯蔵、解毒などに寄与する。また、民間療法では、生葉を熱して腫れもの、火傷、切り傷、おできの保護や消炎に使われた。
庭木としての利用も盛んだ。イギリスを経由して紹介され、ヨーロッパに各地で栽培された。葉に白や黄色の多くの斑が入る園芸品種フイリアオキが選抜され、日本にも逆輸入されている程だ。葉に斑点のあるアオキは、野山の散歩道でも見かける。園芸種のアオキの種がヒヨドリに運ばれたのかもしれない。

アオキは冬の散歩道で見かけると、古くからの友人に出会ったような気分にさせてくれる。