ジャノヒゲ - 冬の瑠璃玉探し

 狭山丘陵の周辺はアップダウンは結構あり、畑はパッチワークのように区切られ分散している。住民の交通手段は自家用車で、細い道が縦横に走っている。畑の境界には様々なグランドカバー植物で縁取られている。このような環境下では、高低差のある道路から目線の高さで植物を観測出来、思わぬ発見をする。いつものように、トコトコとデジカメ散歩をしていたら、やや黄色くなった細長い葉の中から青い実が出ている。更に葉をかき分けると、鈴なりの実が見つかった。これがジャノヒゲとの出会いだ。

ジャノヒゲの実 (2012年2月4日 所沢市)

 ジャノヒゲ(蛇の髭、学名:Ophiopogon japonicus)はキジカクシ科ジャノヒゲ属に分類され、草丈は10cmを越える位の常緑多年草。日本では北海道から九州まで、世界的には東アジアの山林に広く分布。別名が多く、リュウノヒゲ(竜の髯)、ネコダマ(猫玉)とも呼ばれる。園芸品種としても発展。近くのマンションでも、手入れがかからいないためか庭のグランドカバーとして利用されている。普段は余り意識しないが、身近な植物だ。

【基本情報】
・名称:ジャノヒゲ(蛇の鬚)
・別名:リュウノヒゲ(龍の鬚、竜の鬚)、ネコダマ(猫玉)
・学名:Ophiopogon japonicus
・分類:キジカクシ科 ジャノヒゲ属
・分布:東アジア、フィリッピン、日本では北海道から九州まで(原産国の一つ)
・花期:夏
・結実期:冬
・効用:園芸、グランドカバー、薬用
・花言葉:変わらぬ想い、不変の心

■ジャノヒゲの花
 初夏になると、葉の間から花茎が伸び、その上部に総状花序を形成。蕾が開くと、花は白か薄紫色で下向きに咲き、花弁は6枚でやや反り返り気味。小さな清楚な花で、繁る葉に埋もれて見逃しそう。

ジャノヒゲの蕾 (2014年6月29日 所沢市)

ジャノヒゲの花(2020年6月27日 所沢市)

■ジャノヒゲの実
 花が終わると丸い実ができる。はじめは緑色だが、冬になると成熟前に子房から露出した種子が鮮やかな瑠璃色に熟す。これを見ると宝物を見つけた気分になる。

ジャノヒゲの実 (2024年1月12日 所沢市)

ジャノヒゲの実 (2015年1月16日 所沢市)

■近縁種オオバジャノヒゲ
 オオバジャノヒゲとジャノヒゲは植物学上分類も生活史も似ている。オオバジャノヒゲは背が高く、葉の幅は太く、種子の色が黒みがかっていると言われている。ジャノヒゲの群生地を冬に観察してみると、結構な割合で黒い実も見つかる。初夏にオオバジャノヒゲの長い花茎が観測できたのでどうやらジャノヒゲの群生地にオオバジャノヒゲも混在して生育しているようだ。

オオバジャノヒゲの花茎 (2016年6月30日 所沢市)

オオバジャノヒゲの暗い緑色に変化する実 (2013年11月3日 所沢市)

オオバジャノヒゲの黒緑色の実 (2014年11月27日 所沢市)

■人間との関わり合い
 何年も同じジャノヒゲの群生地を観察してきたが、その生育領域に変化はない。地下に根を張り巡らし、他の外来植物等が入り込む余地がないのだろう。環境に適した原産地の強みかもしれない。また、地下の肥大した根を乾燥したものは麦門冬と言う生薬になり、鎮咳や強壮に効果があるとのこと。そして近年は都会の住宅やマンションでの手入れ不要のグランドカバーの需要、等々。文章にすると何の面白みもない。ただ誰もが賛同するのは、夏の間は密かに成長を続け、厳冬期に見事な瑠璃玉をプレゼントしてくれるジャノヒゲの心意気だ。